はじめに
こんにちは。RSSでエンジニアとして働くS.Aです。私は2021年に新卒でRSSに入社し、これまで4年間、新入社員研修に取り組んできました。毎年十数名の新入社員が入社し、キャリア採用の社員も増えています。会社の規模は100名を超えるまでに拡大しました。それに伴い、新入社員のバックグラウンドや志向も多様化しています。AI、デザイン、クラウドといった専門チームも発足し、配属されるチームによって求められるスキルが異なる状況になりました。
この記事では、私が4年間で直面した課題や試行錯誤の道のりをお伝えします。さらに、現在取り組んでいる新しい研修体制についてもご紹介します。成長期にある企業の人材育成や、新入社員研修の設計に関心のある方にとって、少しでも参考になれば幸いです。
研修担当になったきっかけと当時の状況
きっかけは、自分自身の新入社員研修が終わった後、先輩から声をかけられたことでした。当時から現在まで、RSSでは若手を中心に新入社員研修の企画・運営を担当するのが通例です。
当時、RSSは設立3年目。レイスグループ唯一のIT子会社として手探りの運営が多く、新入社員研修の体制はようやく骨組みができたばかり、という状況でした。そうした事情があったからこそ、研修の方針は「早期戦力化」。座学で理論を学ぶよりも、模擬プロジェクトを通して実践的なスキルを叩き込み、即現場へという考えが採られていました。
2021年度研修:原点となった研修と最初の課題
2021年度研修の具体的な内容は、グループ全体の研修後に基本技術を学ぶというものでした。PHP、HTML/CSS、SQLなどに加え、PHPフレームワーク(CakePHP)の公式チュートリアルを実践します。その後は実務に近い模擬プロジェクトでOJTを経て、すぐに現場へ配属されるという流れでした。
アプリ開発未経験の私にとって、公式ドキュメントを読むことは非常に難しく感じました。チュートリアルを手順通りにこなしただけでは、「なぜこうなるのか」が分からず、その後の模擬プロジェクトでとても苦労しました。
当時の研修は一人でドキュメントを読み進める時間が中心でした。そのため、同期同士で教え合ったり、時には先輩の助けを借りたりして、試行錯誤しながら理解を深める学びの場が不足していると感じました。
そこで、新人研修が終わってすぐ研修企画のメンバーになった私は、チュートリアルを公式ドキュメント通りに進めるのではなく、ワークショップ形式で進めることを翌年に向けて提案しました。リアルタイムにやり取りをしながら進めることで、理解が深まると考えたからです。
このアイデアを基に、翌年の2022年度研修では、フレームワークのチュートリアルをワークショップ形式で実施することにしました。
また、当時はコロナ禍で完全リモートだったため、私自身が「もっと先輩と気軽に話せたらよかった」と感じていました。その経験から、2、3年上の先輩社員によるメンター制度を導入し、コミュニケーションの機会を増やすことを考えました。
2022年度研修:手探りの始まりと、最初の壁
年が明けて、2022年に入社した新人は、当時としては過去最多の人数でした。
2021年度の気づきを基に、Laravelのチュートリアルを講師と一緒に進めるワークショップ形式で実施することにしました。分からないことはその場で質問してもらい、全員で一緒に理解を深めていく。そんな双方向の学びの場を目指したのです。
しかし、計画通りには進みませんでした。研修ではLaravelの前にHTMLやCSS、SQLといった基礎技術を各自のペースで学ぶ必要がありました。さらにこの年はコンテンツを拡充したため、進捗のばらつきが大きくなり、全員一斉に実施が難しい状況でした。
1回のワークショップでは終わらず、何度も実施することになり、研修企画メンバーは疲弊してしまいました。さらに、新人は「分からないことが分からない」状態に陥りがちです。疑問点もあまり出ず、効果的な施策とは言えませんでした。
一方、2、3年上の先輩社員によるメンター制度は有効でした。新人の不安を早期に把握できたため、「やってよかった。続けよう」と思えた施策の一つです。
この頃、私は社会人2年目として開発業務にも慣れてきて、「このようなことは新人の時に教えてほしかった」と感じることが増えました。
特に「考え方」に関する研修の必要性を痛感しており、そのことを研修企画チームの先輩に相談したところ、共感してもらえました。これを機に「自分が新人だったら教えてほしかったこと」という視点で新たな研修コンテンツの作成に取り掛かりました。
また、社内の技術スタックがCakePHPからLaravelへと移行していました。そのため、Laravel用の研修コンテンツも併せて準備しました。
2023年度研修:「自分が教えてほしかったこと」を形に
2022年度の反省を踏まえ、2023年度は「自分が新人だったら教えてほしかったこと」をコンセプトに、研修内容を大きく見直しました。
まず着手したのが、技術スタックの変更に伴い準備が必要だったLaravelの研修コンテンツです。以前のワークショップ形式では進捗のばらつきに対応できなかった経験から、各自のペースで取り組めるチュートリアル形式へと変更しました。新人がつまずきやすいポイントの解説を事前に用意しておくことは、新人の自己解決を促すだけでなく、つきっきりで見る必要のあった研修企画チームの負担を軽減する上でも、効果的な工夫でした。
それに加えて、技術スキルの土台となる「考え方」を教える講義も、「自分が教えてほしかったこと」という視点で大幅に拡充しました。
・品質とスピードはトレードオフか
・技術的負債とは
・Chrome Developer Toolsの使い方
・テクニカルライティング
・コンテナとは
・設計
・テスト
・凝集度と結合度
・ブラウザ
・MySQLー重いクエリを高速にする方法
・Webアプリケーションの基礎
・データベース
これらの講義に対して、新人からは「内容が分かりにくい」という意見も一部ありました。しかし、ここでの一番の目的は、すぐに理解してもらうことではなく、将来の成長につながる「知識の種まき」をすることでした。今はピンとこなくても、いつか現場で課題にぶつかった時、頭の片隅に残っている知識がきっと助けになる。そんな想いから、伝え方を工夫するという改善は加えつつも、講義自体は継続することにしました。
こうして研修のあり方を模索する中で、私たちは「早期戦力化」の実現には技術力だけでは不十分だということにも気づき始めます。課題解決力(例:PDCA)や質問力といったスキルも同じくらい重要です。そこで、これらのスキルを採点し、客観的な指標で成長を可視化する新たな試みとして、判断基準やフォーマット、運営体制づくりにも着手しました。
2024年度研修:失敗からの学びと「数値化」の罠
2023年度研修での気づきから、新たな試みを導入しました。それは、技術以外の重要なスキルを可視化し、新入社員の成長をより効果的に促すための仕組みです。課題解決力や質問力といったスキルを数値で評価することにしました。
研修企画チームが定義したスキル項目は、以下の通りです。 (※表は原文ママ)
毎週メンバーで時間をかけて採点とすり合わせを行いましたが、この試みはすぐに壁にぶつかります。
まず、通常の開発案件と兼務で多忙な研修企画メンバーにとって、評価作業の工数がかかりすぎるという問題がありました。また評価の伝え方も難しく、「アドバイスがうまく伝わらない」と感じることもありました。さらに全体の場で個人的なフィードバックをしてしまい、新人に心理的な負担を与えてしまうなど、うまくいかないことばかりでした。
ちょうどその頃、会社の状況も大きく変わっていました。社員数は70名を超えてマネージャーも増え、AI、デザイン、クラウドといった専門チームが次々と発足したのもこの頃です。以前のように全員がフルスタックな開発者を目指すのではなく、それぞれの専門性を高めていく必要が出てきました。
「どう教えるか」という教え方そのものがうまくいかない一方で、会社の成長によって「何を教えるべきか」というゴールまで見えにくくなってしまいました。
この2つの課題に同時に直面し、私たちはこれまで掲げてきた「早期戦力化」という言葉の意味を、根本から考え直す必要に迫られました。
2025年度研修:オフサイトMTGと「全員参加型」への舵切り
2024年度の大きな失敗を受け、私たちは一度立ち止まって考える時間が必要でした。そこで、研修企画メンバーだけでなく、部長やリーダー陣にも集まってもらい、総勢10名でオフサイトMTGを開きました。
まず取り組んだのは、「新入社員に教えるべきこと」の洗い出しです。そして、出てきた項目をみんなでひとつひとつ仕分けしていきました。
A:RSSがチーム配属前に新入社員に教えるべきこと
B:RSSがチーム配属後に新入社員に教えるべきこと
C:グループ(RSSが所属するレイスグループ)がチーム配属前に新入社員に教えるべきこと
D:グループがチーム配属後に新入社員に教えるべきこと
この議論を通じて、「私たちが新入社員研修で本当にやるべきこと(A)は何か」というスコープが明確になりました。議論はどんどん発展し、「将来から逆算して今何をすべきか」という視点で、既存社員の育成にまで話が広がりました。
この議論を経て、研修企画チームは「早期戦力化」という言葉の定義をアップデートしました。それは「①配属後に新人が困らない かつ ②配属後、チームのリーダーや先輩が困らない状態」です。
この新しい定義を実現するために、研修体制そのものを大きく変えることにしました。2024年度研修までは、研修企画メンバーと一部の若手有志だけで運営していました。しかし、2025年度研修からは「RSS全員で研修を行う」体制へと大きく舵を切りました。
・配属先チームのリーダー
・課題解決力の育成
・キャリア観を深めるサポート
・メンタルフォロー
・上記以外の先輩社員
・技術的な質問対応
・進捗管理
・コミュニケーション
それぞれの負荷を分散しつつ、フォローの質を高めるのが狙いです。
2025年度研修のコンテンツは準備期間も短く、まだ完璧とはいえません。それでも、この新しい体制での研修が始まっています。今はもう、やり遂げる覚悟で臨んでいます。
4年間の試行錯誤を通しての学び
4年間の研修企画・運営の経験、特に2024年度研修での大きな反省を通じて、多くの学びを得ました。
成長の土台となる心理的安全性
まず痛感したのは、新人が安心して挑戦できる環境の重要性です。
新人が心から安心して質問や相談ができる環境を整えることが求められます。そして、失敗を恐れない雰囲気を作ることが大切です。スキルの向上はもちろん重要ですが、それ以上に、こうしたオープンな雰囲気が成長の最も重要な基盤となります。
教える側も共に育つ機会
また、研修は新入社員だけのものではありません。私たち先輩社員にとっても「共に育つ」貴重な機会であると気づきました。新入社員の指導に試行錯誤する過程で、私たち自身も多くの気づきや学びを得られます。
技術習得の効率を高める「考え方」の教育
さらに、技術習得の土台となる「考え方」を学ぶことの有効性も実感しました。
例えば、技術的負債や品質といった概念をキャリアの早い段階で学ぶことです。これらの思考法を身につけることが、その後の学習効率やアウトプットの質に大きく影響すると感じています。
リモート下の孤立を防ぐメンター制度の価値
特にリモート環境下では、メンター制度が新人の大きな支えになります。
この点を改めて確認できました。メンターは技術的な疑問だけでなく、日々の不安も気軽に相談できる存在です。その存在が新人の孤立を防ぎ、安心して業務に取り組む上で非常に効果的です。
現場エンジニアが研修を担うことの強み
最後に、現場のエンジニア自身が研修を企画・運営することも、大きな強みだと感じています。
最大の利点は、現場の「今」を研修にダイレクトに反映できることです。日々変化する技術トレンドや、配属後に新入社員が本当に必要とする実践的なスキルを、タイムリーに研修内容へ盛り込むことができます。
それに加え、研修担当の多くが数年前まで同じ新人だったからこそ、「新人のときにこれが知りたかった」という視点や、未経験者がつまずきやすいポイントに寄り添った内容にできるのも、大きな利点です。
未来を見据えて:研修企画チームが目指すもの
研修企画チームは、未来も見据えています。
2026年度研修、そして既存社員向け研修の作成と体制構築です。
研修は新人に限らず、既存社員も学び続けることが重要です。既存社員がレベルアップし、そこで得た知見やコンテンツを新入社員研修にも活かしていく。そんな良い循環を作りたいと考えています。
その解決への大きな一歩が、「技術選定チーム」の発足です。これまでは研修企画チームが技術選定も行っていましたが、その調査は大変な作業でした。今後は、技術選定チームが今後の時流と現場の状態を考慮して技術戦略を判断します。そして、研修企画チームは「どう教えるか」に集中する体制です。
今後は、キャリアマネジメント、技術選定、新入社員研修、既存社員研修、そして配属先チーム、それぞれの担当者が一体となって連携し、RSSの『人づくり』を担っていきます。
おわりに
私たちの新入社員研修は、会社の成長と共に変化し続けてきた、試行錯誤の4年間でした。「これで本当にいいのだろうか」と問い続け、大きな失敗も経験しました。その都度チームで知恵を出し合い、より良い形を模索し続けてきました。
この試行錯誤の道のりが、同じように人材育成に奮闘されている方々にとって、少しでもヒントになれば嬉しく思います。
これからも、RSSに関わる全ての人が成長し続けられる環境づくりに、チーム一丸となって取り組んでいきます。
レイスシステムソリューションズ株式会社のソフトウェア開発や、
採用に関するお問い合わせについては、下記のリンクにてお問い合わせください。
-1.png)



